デフレは必然

おそらく、伝染病や戦争、資源枯渇以外の理由で、人口が自然と減る局面というのを人類は経験したことがないと思う。

池田信夫 blog : デフレ脱却法案について

だから、デフレ克服がこれほど話題になっているのに、10年以上もデフレが続いていて、有効な対策がとれないのは、日銀が無策だからというより、人口減少局面に有効に機能する経済理論が見つかっていないからだと思う。

貯蓄率が経済成長に必要な理由

小宮一慶:日本の「家計貯蓄率」は世界最低水準 | BizCOLLEGE <日経BPnet>

例えば、日本の貯蓄率が下がっていることが問題視されることがあるけれど、今の日本で貯蓄率と成長って関係あるのだろうか?

日本の高度経済成長の要因の一つに、高い国内貯蓄によって投資が行われたことが言われている。そして、今の中国や東南アジアでも、国内貯蓄率は潜在的な経済成長力を測るパラメータとして使われている。

では、どうして経済成長と貯蓄率が関係したのか?

経済成長している国では投資が必要

経済成長している国では年々の需要も供給も増加するから、それを賄うために生産設備(=新しい工場)も増やす必要がある。そこで、新しく工場を建てようと思っている経営者がいるときに、その工場の建設資金を集められなかったらどうなるのか?
需要があるのに、必要な生産設備と供給が間に合わないせいで、経済成長の足を引っ張ってしまう事態が発生する。だから、そうならないように継続して高い成長を維持するためには、十分な投資と、投資を支えられる高い貯蓄率が必要になる。

高度成長期の理論は今の日本には当てはまらない

裏を返すと、高い貯蓄率が必要なのは、資金需要が旺盛で投資が不足していたからであって、「貯蓄率」だけが高くなっても経済成長ができるわけではない。ソフトバンク社債を1%台の金利で発行できるような超低金利状態の日本で、一般的に資金調達に困るような状況っていうのは考えにくいわけで、投資が行われないのは、そもそも需要がないからっていうところに行き着くのではないかと思う。

それを「高い貯蓄率が経済成長を支える」という部分だけ切り取って、今の日本には当てはめようとすると、うまくいかない可能性が高い。

これまでの経済理論をコンテキストを無視して当てはめようとしてうまくいっていないのが、最近の経済論議なんじゃないかな。

人口減で需要が減っている中でデフレになるのは、必然だと思うのだけど。

老いてゆくアジア―繁栄の構図が変わるとき (中公新書 1914)

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